Return



3:じれったい奴等め

作:かぎ

 何だか、周囲の様子が変だ。
 アーマーの調整をしていたと思うと、ぼんやり空を眺めている者が居る。
 書類を配っていたはずなのに、いつの間にかぐるぐる同じところを回ってみたり。

「おい、何か変じゃねぇか?」

 たまりかねて、近くに居た奴の首根っこを掴んだ。
 もしかしたら、と。
 昨夜の俺の悪行が噂になっているのかも、と。
 俺は怯えていたのかもしれない。

「お忙しい所失礼します、これ、アーマーの調整資料です」

 そんな時、突然の背後からの声。慌てて振り向き、資料を受け取った。

「ありがとう、ホノカさん、どうです? お茶でも」

「仕事がありますので」

 パイロットブースに、彼女が来る事は珍しい。資料を持ってきたのは、オブザーバーのホノカだった。
 いつもの様に笑顔で誘ったが、きっぱりと断られる。俺にとっては挨拶代わりなので、特に気にはならない
 笑顔で、帰って行くホノカを見送った。

「ホノカさん……新人パイロット候補生と付き合ってるらしいっす」

 ところで、先程捕まえた若造が、ため息混じりに呟いた。
 その言葉に、ようやくそいつの首を離してやる。
 そう言う事か。
 彼女を狙っていたのは、俺だけではなかった。皆元気がないのは、ホノカに恋人が居たからだったのだ。
 じれったい奴等め、と。
 周りを見まわした。それならそうと、早く教えてくれれば良いものを、と。
 おれは、自分の危惧が間違いと知り、ほっと安堵した。
 そして、そう言えば……。いつもなら、男からホノカをガードする様に一緒に居るあの女。あいつの姿が今日は見えなかった。
――あいつ……どうしたんだ?
 そればかり、気になっていた。
もどかしい二人へ5のお題 >> お題提供:リライト

2005/09/16





©かぎ 2005 All Rights Reserved.