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4:別に、理由なんてない
作:かぎ
久しぶりに、女の顔を見た気がする。
昼食を摂ろうと食堂で順番待ちをしていたところ、女の集団が目に入ったのだ。笑顔を浮かべる様子に、ほっと、安心した感じ。
あの夜。結局何もしないまま、俺は女の部屋を後にした。不法侵入も、酔っていたからと言えばどうにかおさまるのではと楽観視していたのも事実。けれど、何となく、俺はあの女の事が、頭の片隅にいつもあった。
「はいよ、いつもの大盛り」
「おぅ、あんがと、おばちゃん」
それはそうと、食事が整った。いつもの様に、ご飯を大盛りにしてもらい、席を探す。通路を移動途中、女の集団の前を通った。
そんなつもりはなかったけれど、俺は足を止め、女に声をかけた。
「よう」
ぴたり、と。女たちが話を中断する。皆が、お互いの顔を見合わせている様子だ。俺は、ランチプレートからプリンを持ち上げ、差し出した。
「これ、やる」
「え? どうして……?」
どうして、と聞かれても……。
整備班の女は、戸惑いと不安な表情を浮かべ、俺を見上げてくる。別に、理由なんてなかった。だから、答え様がない。
仕方がないので、ぽんと、女のプレートにプリンを置き歩き出した。
もどかしい二人へ5のお題 >> お題提供:
リライト
2005/09/16
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