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01.甘い溜息

作:かぎ

 から揚げを頬張りながらぼんやりスピーチを聞いていた。
 新型アーマーのソフトウェアオブザーバーであるホノカ。今日は、彼女の送別会だった。

「寂しくなる〜寂しくなるっす」

 隣で、酔っているのか演技なのか、後輩が涙ながらに訴える様を見ていた。
 切なそうなため息が、そこかしこで聞こえてくる。
 ただでさえ、男ばかりの職場だと言うのに、また一人女が減ると言う単純な嘆き。
 しかし、当のホノカは笑顔で同僚に囲まれている様だ。ホノカを取り囲む集団。その中に、あいつの姿を見つけ何となく胸が痛んだ。

「中尉ぃ〜、なに見てるんすかぁ? はぁ」

 後輩のため息を聞きながら、どうせなら甘い溜息の一つもつけないのかと、ビールを飲み干した。
 いつも、俺からホノカを庇っていたあいつ。
 ホノカの事を考えると、知らずあいつの事で頭が膨れ上がる。それは、ホノカと間違えてあいつを襲いそうになった罪悪感からだろうか?
 よく、分からなかった。

「はぁ、こうして女が一人また一人と消えて行くわけで……」

 空になったコップに、またビールが注がれる。
 後輩は、とにかく飲みたいのだろう。ただ、俺の手前自分一人だけ飲むわけにも行かない模様。

「こうして、残るは鬼のような女のみってねぇ」

 しかし、俺は、後輩のその一言にカチンと来た。
 コップをそのまま横に流し、横を向く。

「あんまり飲むなよ、みっともねぇ」

「え? なんです?」

 ぼそりと呟いた言葉は、後輩の耳には届かなかった様だ。それならば、その方が良かった。
 鬼のような女とは誰の事だと、もう少しで怒鳴りそうになったのを必死でこらえていたから。
 こんなの、柄じゃねぇな、と。
 目に付いたから揚げを、もう一つ頬張った。

有罪の果物の味#10 >> お題提供:アンゼリカ


2005/12/01


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