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5.単純でささやかな幸福
作:かぎ
「あーーーー、ムカツク」
酒を飲み干して、勢い任せに叫ぶ。同僚が全快祝いに奢ってくれると言う。今日はオフを利用して居住区に飲みに来ていた。
「おいおい、祝いの席だって」
俺の不穏な発言に、同僚は苦笑いを返す。知っているのだ、俺が嫌っている奴によりにもよって命を救われた事を。
有り難いとは思うが、決して素直に喜べない。
むっとして黙り込んでいる俺に、同僚はグラスをもう一つ手渡した。
「まぁまぁ、飲め、そして気持ちを切り替えろ」
頷いて、グラスを受け取る。
こんな時、友と言うのは有りがたい。単純な話だが、こうして気持ち良く酒を飲んでいると、何とも幸せな気分になる。
いつも一人で居るあの女には分かるまい。
俺は、気持ちを切り替えようと、2杯目の酒をぐいと飲み干した。
2005/05/14