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04.目覚めの口づけ
作:かぎ
ゆっくり音を立てないように移動する。
冷蔵庫からスープのパックとパンを取り出しゆっくりと朝食を摂った。いつも通りの朝の風景。時間が来たので、着替えを済ませ、そしてベットを覗き込んだ。
昨日までと違う所と言えば、すやすやと眠る彼女の存在。
俺は更に少しだけ顔を近づけ、彼女を観察した。
以前、一度だけ彼女の昏睡状態に居合わせた時の事を思い出す。あの時、彼女は苦しそうに息を荒げ、表情は苦痛そのものだった。
けれど、今はそれとは明らかに違う。
心地よく眠る彼女がとても可愛い。たまに布団を持ち直す様など、あどけない幼子の様だ。
いつまでもこうして見ていたいのだが、そろそろ出勤の時間だ。俺は意を決して、諦める様に伸びをした。
「……ん」
その時だ。
彼女が小さく声を出し目を開けた。静かに動いたつもりだったけれど、起こしてしまったのかもしれない。
「ゆっくり寝てな」
出来るだけ穏やかに声をかける。
「キツキ一佐?」
けれど、彼女は眠たそうに眼をこすりながら身を起こしてしまう。
俺はその呼ばれ方に反抗する様にぷいと横を向いてやった。
「あ……ええと、サブローさん……」
「俺、出勤するけどまだ寝てて良いぞ」
自分でも単純だと思うのだが、名前を呼ばれるととても嬉しく感じる。しかし、正面を向いているとにやけた顔がバレそうなので、俺はドアに向かった。
「今日……早番なんですか?」
まだ完全に目覚めていないのだろう。どこかぼんやりとした声で彼女がぼんやりした事を問うた。
「いや、通常勤務だけど?」
「え?今……こんな時間っ」
何やら、彼女が慌て出した。振り向くと、目を大きく見開いて時計を凝視する彼女の姿。
俺の視線に気が付いたのか、それから彼女は勢い良く飛び起きた。
「すみません、こんな……寝坊なんてした事無かった……のに」
そして、よろよろと俺に歩み寄ってきた。
余程ショックを受けているのか、布団を握り締めたままの状態だ。
俺はその様子がおかしくて自然と笑いがこぼれた。近づいて来た彼女を勢い良く抱き寄せ、そのまま軽くくちづけた。
「おはようリンナさん……でも、まだ寝てて良いぞ?」
びっくりしたのか、彼女の手のひらから布団が流れ落ちた。
俺は、布団を拾い上げ、彼女の肩に着せ掛けてやる。
「な……にを……」
「何って……朝起きたらキスするの、知らないのか?」
俺のさも当然のような顔が功を奏したのか。
「そう、だったんですか……」
彼女は真っ赤になった顔で、それでも『それは知りませんでした』と礼儀正しく驚いている。
「そう、だから、俺以外の奴とすんなよ?」
「……え?」
まだ、自分が騙された事に気がついていない。
彼女は、訳が分からないと言う風に、首をかしげた。