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03.林檎の毒
作:かぎ
「キツキ、お前最近……身体は大丈夫か?」
「? 至って、健康」
そう言えば、最近何かと、同僚が俺の身体を気にする。
この日も、戦闘終了後肩を叩かれねぎらいを見せる同僚に、笑顔で返したのだが……、
どうにも、気持ち悪い。お前ら、集団で悪いものでも食ったのじゃないかと。妙に俺のことを気遣ったりとか、気持ち悪い。
「お疲れ様です」
「ああ、お疲れ」
パイロットスーツを脱ぎ捨てていると、声をかけられた。返事をしてみると、優雅に微笑むセイカだった。今は俺の部屋で昼寝でもしているはずの、彼女と同じ力を持つ女。セイカの腕の赤リングは、その力を示す物だ。
しかし、同じ隊に所属するが、彼女が俺に話し掛けるとは珍しい。長い髪が揺れる。
「キツキ一佐」
セイカは、また一歩俺との距離を詰め、そして俺の手をそっと取った。
伏し目がちに、けれどはっきりと彼女は囁く。
「もし、不安なら相談してください」
いつもはセイカに群がっている野郎どもの姿が、何故か見えない。
「……相談? 何の?」
「あたしも、多少なりとも力がありますし、もし一佐が精神操作を受けてると思うと、心配で」
しかし、俺は、ぽかんと立ち尽くすしかなかった。
相談?
精神……操作?
セイカが何を言っているのか分からない。力、と言う事は、赤リングのあの力と言う事か?
それだったらと、俺は、軽い気持ちで切り返した。
「ああ、でも、力を使う時って光るだろ? だから、知らぬ間になんかされたって事は無いと思うぞ?」
と言うか、そもそも、彼女が俺にそんな事をするはずが無いと。
俺は信じている。
その時だ。今まで俺の腕を掴んでいたセイカの手が震えた。
ぱたん、と。勢い良く俺の腕がはじかれる。目の前で、驚愕するセイカの顔。
「何故、それを……知っている?」
先程の、余裕の笑みは無かった。震える肩を、セイカが必死にこらえている様子。
「おい? どうした? 大丈夫か?」
「あの女、が、あたし、……違うっ、どうして?! そんな事まで、話すと?」
俺は焦って手を差し出したが、それはぱしりと拒絶された。
一歩、セイカが後退する。
彼女の瞳は、甘い林檎のような笑みと激しい毒を含む怒りに満ちていた。
2005/10/13