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3.破壊衝動
作:かぎ
その女は、黄色いリングをはめていた。だから、軍人の家族なのだ。けれど、あたしは分かってしまった。
アレは能力者。
あたしと同じに他人の心を侵食する。
異端。
異端。
「あの、お願いします」
カウンター越しだと言うのに、必要以上に腰が低い。一般の事務員に必死にお願いしているその女。
「はい、分かりました」
その様子に、事務員が苦笑いしているのがよく分かる。
リングの色は軍属ではないので当たり前なのだが、まるで軍人とは思えない。
「リンナさんっ!アンタこんな所で何やってるの?」
丁度事務員とのやり取りが終わった所に、見た事のあるパイロットがその女に話しかけた。あたしは観察している事に気付かれぬ様、物陰に身を潜める。
パイロットは、気遣う様に何度か女の頭をなでる。女は、驚いたように頬を赤らめ、私は大丈夫ですよと首を振る。
やがて、二人は並んで軍施設の出口へ向かって行った。
「なんだ、アレ」
がりがりと、壁に爪を立てる。そうしていないと、どうにかなってしまいそう。
アンタ、何黄色のリングなんてつけてるの?
アンタ、何心配してもらってるの?
あたしは、身をすり減らして笑ってるって言うのに。
あんた、何、幸せそうに笑ってるの?
興味があった。
異端扱いされていた前任の能力者が、どうやって軍人の家族の座を手に入れたのか興味があった。
でも、今はもういい。
それよりも、ずるい。
あたしは毎日戦っているのに、あの女は幸せそうだ。
同じ能力者なのにずるい。
だから、あたしの中に芽生えた、破壊衝動。
2005/07/10