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4.汚濁

作:かぎ

「この赤リングってね、味方に力を使うと腕を焼ききるんですよ?」


 それは、半分嘘。確かにある程度の抑止は働くだろうけれど、そこまでは無いはずだ。
 あたしは、そんな事はおくびにも出さず、悲しそうな表情を作ってリングをなでた。


「そんな…セイカさんがそんな事するはず無いじゃないか…」


 すると、今まで身を寄せていたその男は握り拳を作って、その可能性を否定した。
 多少オーバーリアクションだが、その反応に満足する。


「でも、やっぱり、怖いですよね…」


 あたしは、心とは裏腹に、目を伏せ苦しそうな顔で小さく声を出す。


「いや、それこそこのリングが証明してくれるよ、セイカさんが味方に向かって何もしない事をね」


 そう。すなわち、この赤リングが反応をしないと言う事は味方には力を使っていないということだ。
 いい感じ。


「そうですよね、それに、赤リングが味方になにかしたなんて、この艦では無かったんですよね?」


 あたしは、さりげなくそう付け足した。
 すると、目の前の男は、ああそうだと頷きかけて、ふと固まる。
 そう、それでいい。


 あたしは、規制されている赤リングをはめているから安心。
 けれど、黄色リングは規制されていない。そして、それをはめている能力者が艦内に生活している。


 あたしに言い寄る男に、片っ端から、こんな風に自然に考え方を誘導する。
 噂でがちがちに固められ、汚れてしまえば良い。
 あたしは、あの女がそうやって汚濁して行くのを願っていた。

PATTERN 13 >> お題提供:pattern-α


2005/07/10

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