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4.それは息を飲むような

作:かぎ

 その日は突然やって来た。


 晴れてもいない、雨でもない。中途半端な天気の中、登校した。遅刻になるような時間でもないが、生徒の大半が登校を済ませている時間だった。
 いつもの様に、生徒がまばらになった坂を登る。この坂の頂上に、学校があるのだ。
 しかし、今日に限って、やけに校門が騒がしい。人だかりが出来ていて、皆校舎に入る気配も無い。
 何があったのか?
 軽い気持ちで、その輪の中心を覗きこんだ。


「フウコさんっ、僕と付き合ってくださいっ」


 直立不動の姿勢から、そのまま腰を45度に折り曲げたようなギクシャクした礼。
 真っ赤に染まった顔。
 告白するのは良いんだけれども、朝っぱらからこんな人目につく所でと言うのは、いかがなものか。
 これでは、相手の女子が可哀想だ。
 俺は、ぼんやりそんな事を考えていた。朝なので、頭の回転がおぼつかない。しかし、何かが心に引っかかる。
 礼をしたまま固まったその男子は、先程なんと言ったのだろうか。


「……あの…そ、それは……」


 その男子が校門の前で動かないものだから、相手の女子は校舎に逃げ込む事も出来ずに戸惑っていた。


 そして、


 誰にも気付かれないところで、


 俺は、一人、息を呑んだ。


 困り果てて、言葉に詰まっているのは、紛れも無い、彼女だったから。
 一体、彼女はどうするつもりだろう?



2005/04/13


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