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4.手段は言葉だけじゃない
作:かぎ
頭をなでられた。
殴られたわけでも痛い訳でもないのに、むず痒い感じがして首をすくめる。
「…かわかんねーよ、本当」
彼の言葉に愕然。
それは、私の台詞だと思う。あんなにはっきり言ったのに、どうして分かってくれないのか。
そして、まず私の頭をなで続けている手は何なのかと。
「俺の事が怖くて、適当言ってる?」
弱々しい彼の声に、驚いて首を横に振る。
「適当言って、この場を逃れたいとか?」
そんな事は無い。
それは違う。私は、また慌てて首を振った。
「ごめんな」
彼は語る。
「俺はお前と一緒に居たかったんだ」
ゆっくりだけれど、まっすぐ私を見て、話し続ける。
「でも、間違えたんだ、だから」
「だから?」
いつの間にか、頭の上にあった彼の手のひらは、私の頬を優しく包んでいた。
「俺は、お前が…」
残念ながら、その続きは聞こえない。
部屋と玄関の間。
狭い廊下の中で、座り込んだ二人。
言葉の代わりに、優しいキスで気持ちを貰った。
2005/05/10